COLUMN
あいちの離島
コラム
投稿日:2026.03.27 更新日:2026.03.30
ワーケーション施設に求められる必須条件とは(ワーケーションコラム全8回・第6回)
ワーケーション

ワーケーション施設に求められる必須条件とは
とある自治体主催のワーケーションモニターツアーに参加したときのこと、いざ仕事をしようとしたら部屋までWi-Fiが届かないことや、そもそもワークの時間が確保されていないなんてことがありました。
ワーケーションをしたことがある人の中には、同じような経験をしたことがある人も少なくないはずです。
コロナ以降、「ワーケーション施設」を名乗る宿は日本各地で増えています。でも実際に使ってみると、一般的な観光宿とほとんど変わらないケースが意外と多いです。
ワーケーションは「観光の延長」ではなく、仕事をしながら滞在する生活型の旅です。そのため求められる条件もまるで違います。
年間の半分以上をワーケーションを含む自宅以外の場所で仕事を行う筆者が、ワーケーション施設に必要な条件を整理してお伝えします。

篠島観光ホテル大角のワーケーションスペース
中長期滞在プランがある
ワーケーションを日常的に取り入れている層は、1週間、ときには1か月単位での滞在が基本です。多くの宿は1泊2日の観光客向けに設計されているため、中長期のワーケーションには使いづらい価格設定であることが多いです。
連泊割やウィークリープラン、平日限定の割引プランがあるだけで、ワーケーションを実施する側にとっての選びやすさが大きく変わります。
地方の宿は平日が空きがちだとよく聞きます。その枠をワーケーション向けに開放するだけで、新しい需要が生まれます。

離島での中長期滞在のイメージ図
安定したWi-Fiと電源環境
ワーケーションを実施する方の大半はリモートワークができる職種の方だと思います。
そのため通信環境は生命線です。「Wi-Fiあります」より、「速度〇〇Mbps、オンライン会議対応」と具体的に書いてある宿の方が断然信頼できます。
よくある落とし穴は、共用エリアはつながるが自分の部屋だとWi-Fiが弱い、作業スペースであろう机に対してコンセントが遠く、延長ケーブルが用意されておらず充電できないといったケースです。
各部屋とワークスペースで安定したWi-Fi接続を保証し、できれば速度を数字で公開してほしいところです。目安は上下50Mbps以上。延長ケーブルや電源タップの貸し出しがあると、さらに喜ばれます。
個室でオンライン会議ができる環境
ワーケーション実施者は1日に複数のオンライン会議が入ることも珍しくありません。
オープンなカフェスペースやドミトリーでは、セキュリティ面でも音の問題でも、業務の会話をするのは難しいです。
個室でオンライン会議が可能なミーティングスペース、または会議OKな個室があるかどうかは、ワーケーション施設としての大きな差別化ポイントになります。「防音個室あり・オンライン会議OK」という一文があるだけで、選ばれる確率はぐっと上がります。
仕事用の机と椅子
意外と見落とされがちなのが、机と椅子の環境です。
とくに温泉旅館などの昔ながらの客室には低いテーブルと座布団しかないため、部屋にこもって長時間作業するのは正直つらいものがあります。
観光目的なら問題ありませんが、ワーケーションの場合は日常の延長のため、1日8〜10時間PCに向かうこともあります。低いテーブルでの長時間作業は、腰と首にじわじわとダメージが蓄積します。
デスクと椅子は、部屋に置くのが難しければ、最低限コワーキングスペースには設置してほしいところです。高さ調節できるスタンディングデスクやアームレスト付きの椅子があると、長期滞在者には本当に喜ばれます。
24時間使えるワークスペース
各宿泊施設がワークスペースを設けるのが難しい場合は、ワーケーション実施者を呼び込みたいエリアで連携してコワーキングスペースを運営するという方法もあります。
ただ、コワーキングスペースがあるから安心という事前情報に対して、実際に行ってみると17時までしか使えないというケースが結構多かったです。
昼間に観光を入れて夜に作業をするのもワーケーションならではの働き方です。それ以外にも、海外のチームと仕事をしている人は夜が主戦場だったり、朝5時から仕事を始める人がいたり、集中したいから深夜に作業する人がいたりと、多様な働き方に対応できていない地域をよく見かけます。
17時から翌朝9時まで働く場所がないのは、ワーケーション施設として致命的です。24時間利用可能が理想ですが、難しければ早朝6時から深夜23時まで使えるだけでも大きく変わります。
自炊できるキッチンと冷蔵庫
1週間以上の滞在になると、毎日外食はきつくなります。健康面でも、食費の面でも。そもそも近くに飲食店が少ない地域もあります。
共用キッチンや簡易キッチン、そして買ったものをいれておける冷蔵庫があると、生活の質が一気に上がります。
地元のスーパーで旬の食材を買って料理する体験は、その土地との新しい接点にもなります。ワーケーションならではの醍醐味のひとつです。

日間賀島で夏期イベントの為に長期滞在するスタッフ用に使用されているキッチン
洗濯機・乾燥機
ワーケーションは生活型の滞在です。だから洗濯機と乾燥機は、観光宿とは違うレベルで必要になります。
「近くにコインランドリーがある」だけでも正直ありがたいですが、車なし・雨の日・夜間のことを考えると、施設内にあるに越したことはありません。

篠島にあるコインランドリー
スーパーやコンビニへのアクセス
長期滞在中は、水・食材・日用品を定期的に買う必要があります。
徒歩圏にスーパーかコンビニがあるか、なければ施設に自転車や共用車があるか。宅配ボックスがあって荷物を受け取れるかどうかも、地味に重要です。
施設側としてできることのひとつは、近隣の買い物スポットをまとめた地図やリストを用意しておくことです。それだけでも、滞在者への大きな親切になります。
地域とゆるくつながれる仕組み
ワーケーションの魅力は、仕事環境だけではありません。その土地を感じながら過ごせることが、普通の観光との大きな違いです。
地元の人との交流イベント、農業・漁業体験、地域食材のマルシェといった仕掛けは、滞在の満足度を高めるだけでなく「また来たい」と思ってもらえる理由になります。
大切なのは強制しないこと。参加したい人だけがゆるく参加できる雰囲気がちょうどよく、それが自然な地域とのつながりを生みます。

佐久島での来島者も参加できる竹林伐採イベント

日間賀島での島民と来島者が交流できるゴミ拾いイベントオーシャンピックの様子

篠島での来島者が参加できる島民主催のウミホタルふれあい発光観察会
ワーケーション施設は「宿」ではなく「生活拠点」
ここまで挙げてきた条件をひとことで言うと、「観光宿ではなく、生活できる場所」ということです。
仕事環境であるWi-Fi・机・会議室・24時間対応、生活環境としてのキッチン・洗濯機・買い物できる場所へのアクセス、地域体験としてのゆるいつながり・自然・食。この3つの要素が整ったとき、その施設や地域は「また戻ってきたくなる拠点」になります。
ワーケーション実施者は、一度気に入った場所にはリピートします。
口コミで仲間に広げてもくれます。観光客の延長として考えるのではなく、お試し移住くらいのテンションでやってくる人の「ちゃんと仕事できる場所」を作ることが、結果的にワーケーション誘致に成功する要因になるのではないでしょうか。

篠島のワークスペースを活用した地域課題解決に関するワークの様子
・・・

執筆者:岡村龍弥(オカムラタツヤ)
プロフィール:合同会社Guild 代表、シャンディのニックネームで親しまれる。「自分らしく生きる人を増やしたい」という想いのもと、どこでも働けるノマドワーカー育成を中心
