COLUMN
あいちの離島
コラム
投稿日:2026.03.23 更新日:2026.03.25
サステナブルツーリズムの視点から考えるワーケーション(ワーケーションコラム全8回・第4回)
ワーケーション

年間の半分以上を自宅以外の場所でワーケーションをするライフスタイルの筆者ですが、持続可能な旅であるサステナブルツーリズムの啓蒙活動をするWebメディアの総合プロデューサーもつとめています。
そんな筆者が今回ワーケーションという選択肢がいかにサステナブルツーリズムに繋がるかをお伝えします。

そもそも「サステナブルツーリズム」とは何か

一般的にサステナブルツーリズムとは、観光が環境・社会・経済に与える負荷をできるだけ減らしながら、地域と旅行者の双方にとって長期的なメリットをもたらす旅のあり方のことを指します。
サステナブルツーリズムというと、「エコツアーに参加する」「オーガニックの宿に泊まる」など、少し小難しい取り組みをイメージする人も多いかもしれません。
「サスタビ サステナブルな旅の情報サイト」では、誰でも簡単に実践しやすいよう、入り口として「サスタビ20ヶ条」を定義しています。まずは1歩ずつ意識を変えることでもサステナブルツーリズムに繋がる、ということを広めることを目指しています。
その中で、ワーケーションというライフスタイルそのものが、意識せずともサスタビが伝えている多くの要素を内包しています。今回はその観点からお伝えします。
参考:サスタビ:サステナブル旅の情報サイト、サスタビの20ヶ条-サステナブルな旅人のガイドライン-
ワーケーションがサステナブルな理由、8つのポイント
1. 長期滞在することで「観光の分散」が自然に発生する

短期の旅行では、限られた時間で名所をめぐることが優先されます。その結果、人気スポットへの集中が起き、いわゆる「オーバーツーリズム」の一因にもなっています。
一方でワーケーションは、同じ場所に中長期で滞在するスタイルです。有名な観光地だけでなく、地元の人しか知らない路地裏の喫茶店、地域の神社仏閣、早朝の漁港など、観光ガイドには載っていない場所に自然と足が向きます。
これは観光客の分散につながり、特定スポットへの過負荷を和らげる効果があります。
2. シーツ交換が不要になる

ホテルや旅館に中長期滞在することで、毎日シーツやタオルを交換する必要がなくなります。一般的に、ホテルのリネン類を1回洗濯するごとに大量の水と洗剤を消費します。
ワーケーションでは同じ宿に長期で滞在することが多いため、ホテルに「今日は交換しなくていい」と伝えてみてください。宿側にとっても水道代・洗濯コストの削減になり、双方にとってメリットのある選択です。たかがシーツ交換と思うかもしれませんが、年間を通じると積み重なれば相当な環境負荷の削減につながります。
3. アメニティの使い捨てが減る
多くの宿では、歯ブラシ・かみそり・シャンプーなどのアメニティが毎日新品で提供されます。一般的な観光旅行であれば毎泊異なる宿に泊まることが多く、毎回これらを使い捨てていくことになります。
ワーケーションでは同じ宿に連泊するため、初日に受け取ったアメニティを使い続けられます。どうせ毎日使うのであれば、マイ歯ブラシやシャンプーを持参するのもおすすめです。
プラスチックゴミの削減という観点からも、長期滞在は非常に理にかなったスタイルといえるでしょう。
4. 地域の「日常」にお金が落ちる

一般的な観光旅行では、観光地の飲食店や土産物店でお金を使うことが多くなります。それ自体は悪いことではありませんが、観光業に偏った収益構造になりやすいという側面があります。
ワーケーションでは、毎日の食材を地域のスーパーで買い、地元のコインランドリーを使い、近所の定食屋でランチをとる、いわゆる日常生活の延長が旅行先で行われます。
これにより観光客が普段立ち寄らない場所にもお金が落ち、地域全体の経済を支えることに自然につながっていきます。
「人はたくさん来るけど、観光業以外にはお金が落ちないから、正直あまりうれしくない」
そんな声をその地域に暮らす方から聞くことがあります。ワーケーションをする人が増えれば、そんな本音も少し減るのではないでしょうか。
5. 長距離移動の頻度が大幅に減る

航空機や新幹線による長距離移動は、CO₂排出の主な原因の1つ。
毎週末どこかへ旅行し、月曜朝には帰宅するという生活スタイルと比べると、ワーケーションでは同じ場所に長く留まる分、移動の頻度が格段に少なくなります。
たとえば1か月間東京と大阪を毎週往復するよりも、大阪に1か月滞在してワーケーションする方が、移動による環境負荷は圧倒的に小さくなります。
「どこかに行く」回数を減らすことで、1回あたりの旅の密度を高めながら、トータルのCO2排出を抑えることができるのです。
6. 地域の人と関わる機会が自然に増える

1泊2日の旅では、宿のフロントスタッフや飲食店の店員と少し話す程度の交流が限界ではないでしょうか。
しかしワーケーションで同じ場所に長く滞在すると、顔を覚えてもらったり、地元の人と自然に会話が生まれたりします。
筆者はよく地元の人が集まる居酒屋で、穴場スポットを教えてもらうことが多いです。ほかにもその際に地域のコミュニティイベントに誘ってもらったりすることが多いです。
地域の人との交流が深まれば深まるほど、「また遊びにきたい場所」になり、再訪することも視野にはいります。関係人口の増加という観点でも、ワーケーションは地方創生と親和性が高いスタイルです。
7. 旅行=疲れるものではなくなる

一般的な観光旅行では「せっかく来たんだから」という気持ちから、スケジュールを詰め込みがちです。
しかしワーケーションでは、特に何もしない午後があってもいい。気が向いたら散歩し、疲れたら宿でのんびりする。そういうゆるやかな時間の流れの中にこそ、地域の本当の空気が感じられます。
観光地としての顔だけでなく、住民が暮らす「生活の場」としての地域を体感できるのは、長期滞在ならではの特権です。
地域を「消費」するのではなく「体験」するという姿勢がサステナブルツーリズムの本質であり、ワーケーションはその実践にもっとも近いスタイルだと感じています。
8. 地域文化に深く触れられる

1泊2日では、表面的な観光スポットを訪れるのが精いっぱいです。
それと比較して中長期滞在をしながら地域の人たちと関わることで、地域の祭りや季節の行事のタイミングに偶然居合わせたり、地元の食文化を時間をかけて学んだりする機会が生まれます。
「旅行者」ではなく、一時的な「住人」に近い感覚で地域文化と向き合えるのが、ワーケーションの醍醐味のひとつです。
ワーケーションは「意識しなくてもサステナブル」になれる旅

ここまで挙げてきたポイントを振り返ると、ワーケーションのサステナブルな要素のほとんどが、特別な努力や追加コストなしに実現できることに気づきます。
「環境に配慮した行動をしよう」と意気込まなくても、長く同じ場所に滞在するというスタイルそのものが、自然とサステナブルな旅を形成していく、これこそがサスタビで伝えたい目指すところです。
もちろん、ワーケーション中にさらに意識を高めることもできます。
地元の食材を選ぶ、公共交通機関を活用する、ごみの分別ルールを守る、地域のボランティア活動に参加してみるといった、一つひとつの選択が積み重なって、旅はより豊かな意味を持ちます。
「長く、深く、地域と共に」がサステナブルな旅の本質

サステナブルツーリズムは、特別な環境ツアーに参加することでも、サステナブルを意識しているかわりに少し通常よりも高価なホテルに泊まることでもありません。
地域に対してリスペクトを持ち、できるだけその場所の日常に溶け込み、長く関わり続けることが大事であり、それこそが持続可能な旅の本質だと筆者は考えています。
ワーケーションは、仕事の効率という観点からだけでなく、旅のあり方そのものを問い直す視点として、これからの時代にますます重要なスタイルになると確信しています。
次の旅先を考えているなら、ぜひ「もう少し長く、もう少し深く」という視点を加えてみてください。
その選択が、旅行者である自分にとっても、受け入れてくれる地域にとっても、地球全体にとっても、きっとよりよい未来につながっていくはずです。
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執筆者:岡村龍弥(オカムラタツヤ)
プロフィール:合同会社Guild 代表、シャンディのニックネームで親しまれる。「自分らしく生きる人を増やしたい」という想いのもと、どこでも働けるノマドワーカー育成を中心に、旅と教育を軸に活動中。チェコ親善アンバサダーをはじめ、さまざまなアンバサダー活動にも取り組む。
