COLUMN
あいちの離島
コラム
投稿日:2026.03.23 更新日:2026.03.25
地域にとってのワーケーション、本当のメリットとは(ワーケーションコラム全8回・第5回)
ワーケーション

ワーケーションは、働く側にとってのメリットがよく語られがちです。受け入れる地域の側から見たとき、ワーケーションで来る人はどんな存在で、来ることに対してメリットは本当にあるのか。
年間の半分以上をワーケーションで過ごす筆者が、各地に滞在してきた経験をもとに、地域側から見たワーケーションのメリットをお伝えします。
意外と語られてこなかった、地域目線のワーケーション論です。(今回のワーケーションは1週間以上その場所に滞在するタイプのワーケーションを指します。)
「観光客」と「ワーケーションで来る人」はどう違うのか

地域から見たときの両者の違いを整理してみます。
一般的な観光客は、週末や連休に集中して訪れ、2〜3日で観光スポットをめぐり、帰っていきます。消費の中心は観光施設・飲食店・お土産屋。地域の人との関わりは薄く、再訪するかどうかもわかりません。
一方でワーケーションで来る人は、平日を含めて1週間から数週間単位で滞在します。仕事をしながら暮らすように過ごすため、地域のスーパーで買い物をし、近所の定食屋でランチをとり、散歩がてら地元の人と話すようになります。
同じ「外から来た人」でも、地域との関わり方がまるで違うのです。
観光オフシーズンにも人が来てくれる

地域観光の大きな課題のひとつが、繁忙期と閑散期の差。
夏休みや連休は賑わっても、平日や冬場は人が来ない。そのギャップに頭を悩ませている地域は少なくありません。
ワーケーションで来る人は、基本的に平日も滞在しています。リモートワークが前提なので、混雑する週末よりもむしろ、静かな平日に旅先で仕事をすることを好む人も多いです。
繁忙期に集中しがちな観光の流れを平準化し、閑散期にも地域へ人を呼び込む効果が期待できます。
宿にとっても、平日の稼働率が上がることは経営の安定につながります。「週末だけ満室で平日はガラガラ」という状況が少しでも改善されれば、地域全体にとってプラスになります。
若い世代が地域に来て、滞在する

リモートワークが普及した現在、ワーケーションを実践しているのは20代〜40代のビジネスパーソンが中心といわれています。
地方への旅行者は高齢層が多くなりがちという実態がある中で、若い世代が地域に来て、数日から数週間滞在するというのは、それだけで地域にとって新鮮な変化です。
若い世代が増えることで、地域の飲食店や宿泊施設にとっては新しい客層との接点が生まれます。若者が地域を歩き、カフェで仕事をし、SNSで発信する姿が、地域に新しい空気をもたらすこともあります。
過疎化や高齢化が進む地域にとって、若い人たちが一定期間でも滞在してくれることの意味は、数字だけでは測れない部分もあるのではないでしょうか。
観光業以外の人たちにもお金が落ちる

観光客のお金の使い道は、どうしても観光スポット・飲食店・土産物店に集中します。
その結果、観光業に携わる人たちには恩恵があっても、地域全体に経済効果が広がりにくいという問題があります。
ワーケーションで滞在する人は、生活者に近い動き方をします。地域のスーパーで食材を買い、コインランドリーを使い、薬局に寄り、地元の床屋で髪を切る。観光客がまず立ち寄らないような場所にも、自然とお金が落ちていきます。
「人はたくさん来るけど、うちには関係ない」と感じている地域の人がいるとしたら、ワーケーションの滞在者が増えることで、その感覚が少し変わるかもしれません。
関係人口が生まれる

ワーケーションで訪れる方は、移住や定住はしないけれど、特定の地域と継続的に関わり続ける、いわゆる関係人口になることが多いといわれています。
1回きりの観光で終わった旅先と、何度も滞在して顔なじみができた場所とでは、その後の関わり方がまったく異なります。
ワーケーションで長く滞在した地域は、「また行きたい場所」になりやすいのは当然のことです。
実際に再訪したり、友人を連れてきたり、地域のクラウドファンディングを応援したりと、さまざまなかたちで繋がり続けてくれる存在になります。
人口が減り続ける地域にとって、定住者を増やすことは簡単ではないですが、関係人口を増やすことが、地域を長く支えてくれる人の輪を広げる現実的な方法のひとつです。
地域の「ファン」になり、自然と「発信者」が増える

ワーケーションで来る人は、帰ったあとも地域のことを話し続けてくれます。同じようにワーケーションをしている仲間との会話の中で「あそこよかったよ」と口コミが広がったり、友人や家族に「今度一緒に行かない?」と声をかけたり。
観光PRとして作られたきれいなコンテンツよりも、実際に滞在した人のリアルな口コミの方が、次に来る人の背中を押すことも多いものです。地域がお金をかけて広告を打たなくても、滞在者が自然と情報を広げてくれる。
そんな人が少しずつ増えていくことが、地域にとってじわじわと効いてくる財産になります。
地域の人が「自分たちの地域」を見直すきっかけになる

外から来た人が、地元の人が当たり前だと思っていたことに感動することがあります。
「こんな朝ごはんが毎日食べられるんですか」「この景色、毎日見てるんですか」
そんな一言が、地域の人にとって自分たちの地域を改めて見直すきっかけになることは少なくありません。
筆者自身も、ワーケーション先で地域の人に話しかけられ、「そんなに特別なことだと思っていなかった」と喜んでくれた場面を何度も経験しています。
外の目線が入ることで、地域の人が自分たちの暮らしや文化に誇りを持ち直すことは、地域の活力を育てることにも繋がります。
移住・定住への関心が高まるきっかけになることもあり、ワーケーションの受け入れが、長期的な地域づくりの入り口になることも珍しくありません。
ワーケーションは、地域にとって「人が来る」だけじゃない

観光客が来ることと、ワーケーションで人が来ること。どちらも「外から人が訪れる」という点では同じですが、地域へのインパクトはまるで異なります。
お金の使い方、滞在期間、地域との関わり方、その後の繋がりと、あらゆる面で、ワーケーションは地域に「深く」関わる滞在スタイルです。
もちろん、受け入れる側の環境整備も大切です。
というのも、ワーケーション実施者は食事や休憩の時間以外、基本的にパソコンで仕事をしています。

Wi-Fi環境、コワーキングスペース、オンラインで会議ができる個室の準備、長期滞在の割引がある宿など、ワーケーションに最適なインフラが整っていない場合は、せっかく来てくれたワーケーション実施者もリピートしてくれません。
その逆にそこさえしっかりしておけば、さらに多くの人が地域に訪れ滞在していくことでしょう。
ワーケーションをする側にとっても、受け入れる地域にとっても、「ただ来て、ただ帰る」ではない関係が生まれること。それが、これからの旅と地域のあり方を変えていくのではないかと感じています。
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執筆者:岡村龍弥(オカムラタツヤ)
プロフィール:合同会社Guild 代表、シャンディのニックネームで親しまれる。「自分らしく生きる人を増やしたい」という想いのもと、どこでも働けるノマドワーカー育成を中心に、旅と教育を軸に活動中。チェコ親善アンバサダーをはじめ、さまざまなアンバサダー活動にも取り組む。
