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MIRAI

未来をつくる

投稿日:2026.03.27 更新日:2026.03.31

あいちの離島3島をめぐる関係人口との地域共創の旅

佐久島日間賀島篠島

「離島の課題解決に、自分のスキルを役立てられないか」

そんな想いを持つ人々が集まった、愛知県主催の地域共創プロジェクト。2025年12月20日から22日にかけて、佐久島、日間賀島、篠島という3つの離島をめぐり、島民の方々と対話を重ねる2泊3日のツアーが開催されました。

人口減少、担い手不足、医療問題等、観光で訪れるだけでは見えない島のリアルな課題に向き合い、自分たちに何ができるかを考える旅。

今回は、その3島ツアーの様子をお伝えします。

あいちの離島が抱える課題と地域共創プロジェクトの目的

愛知県にある佐久島、日間賀島、篠島の3つの離島では、人口減少による地域の担い手不足が深刻化しています。

それぞれの島が独自の伝統文化や産業を受け継いできましたが、このままでは維持が難しくなるという切迫した状況に直面しています。

そこで愛知県が主催したのが、この地域共創プロジェクト。島と関わりたい人と、島を担う人々をつなぎ、地域課題の解決や新たな取り組みを共に創り上げていくことを目的としています。

今回のツアーには、以下のような想いを持つ社会人が参加しました。

  • 自分のスキルや経験を「あいちの離島」で役立てたい
  • 島の地域づくりやお祭り等の伝統文化に興味がある
  • 離島の地域活性に貢献したい
  • 離島での暮らしや働き方に興味がある

単なる観光ではなく、島民との対話を通じて課題を知り、解決策を一緒に考える。そんな深い関わりを持つための旅です。

1日目:佐久島で知る、人口150人の島のリアル

地産地消を体験できる「永運丸」でランチ

集合場所は愛知県西尾市にある一色港。あいにくの雨でしたが、参加者たちは軽い自己紹介をしながら定期船に乗り込み、約20分で佐久島に到着しました。

最初に訪れたのは、地域おこし協力隊を経て移住し、漁師をしながら飲食店を営む「永運丸」。週末限定メニューもあるこの店では、佐久島でとれたイカや牡蠣を味わえます。参加者たちは蒸し牡蠣やカキフライに舌鼓を打ちながら、島の食文化を体感しました。

筆者自身、サステナブルツーリズムを啓蒙するメディア「サスタビ」の運営に携わっていますが、旅先では地域にお金が落ちるよう、地産地消のレストランを積極的に利用することを推奨しています。

永運丸はまさに、そんな旅のあり方を実践できるお店でした。

行政の視点から知る佐久島の現状

食後は、西尾市役所の佐久島振興課に勤める方との交流の時間。

行政としてどんな取り組みをしているのか、行政目線での佐久島の現状について話を聞きました。この後の島巡りで理解が深まるよう、事前に知っておいてほしい知識をインプットしていただき、質疑応答で盛り上がりました。

島の散策で見えてきた、移住者の視点

意見交換の後は二手に分かれて島の散策を実施。佐久島は「アートの島」としても知られており、島を回遊できるようにと配置されたアート作品をめぐることで、自然と島を周遊できる仕組みになっています。

筆者が同行した側では、島に移住した方が営むギャラリーカフェを訪問。アールグレイ抹茶とはじめて見るメニューを全員が興味津々に注文。できあがったアールグレイ抹茶を飲みながら、参加者と移住した方との間で会話が弾みました。

「なぜ佐久島に移住しようと思ったのか」「実際に暮らしてみてどうか」、参加者からの質問に、移住者の方は自身の経験を率直に語ってくれました。

夕方には雨も上がり、参加者たちは思い思いに島の時間を楽しみながら、宿へと向かいました。

2日目:島を美しくつくる会との対話で見えた課題

朝食を済ませた後、「島を美しくつくる会」のメンバー2人をお招きして、島の現状や成り立ち、現在の課題についてヒアリングしました。

佐久島の人口は約150人。このまま人口が減少し、100人を切ったら島内のインフラも維持できなくなるのではという直近の課題があります。島ならではの医療問題や渡船問題など、観光で見える魅力的な側面だけでなく、これから解決していかなければならない切実な問題を聞きました。

参加者たちは、自分たちのリソースや能力で何かできないかとディスカッションを広げていきます。

また、アマモの再生活動でブルーカーボンクレジットを取得しているものの、実際に販売はしているが売れていないという課題も共有されました。

取り組みはしているものの成果がまだ出ていないというリアルな声が、参加者たちの心に響きます。

自由時間でそれぞれの佐久島を楽しむ

スケジュールを詰め込みすぎない旅程にしたこともあり、参加者は自由時間に思い思いの過ごし方をしていました。

島を散策したり、ビーチクリーンをしたり、ランニングで島を巡ったり、アート作品を鑑賞しに行ったり。それぞれが佐久島との関わり方を見つけていきました。

2日目午後:日間賀島へ移動、「たこ」の島を堪能

海上タクシーで日間賀島へ

佐久島から日間賀島へは定期船がないため、海上タクシーを利用しました。海上タクシーは1回いくらという料金形態のため、複数人で乗る場合はかなりお得に使えます。

日間賀島の東港に到着後、昼食は「たいかいろう」へ。日間賀島といえばやはり「たこ」。参加者たちはいろいろ注文していましたが、中でもたこの唐揚げが大人気でした。

東港から西港へ、島を歩いて体感

食事の後は、島のことをもっと知っていただくために、東港から西港へと観光スポットであるハイジのブランコに立ち寄りながら歩いて移動しました。途中でシラスソフトクリームを食べている参加者も。

西港の少し手前にある「丸幸」は、しらすを加工・販売しているお店。新商品のお酒に合うしらすのおつまみを購入したり、前日にしらすが上がり工場が稼働していたため、急遽ご好意で工場見学をさせていただき、あげたてのしらすをいただいたりしました。

西港に着いた後は少し自由時間。お土産屋で名物のたこまんじゅうを買ったり、天ぷら屋であげたての天ぷらを食べたりしながら、参加者同士の仲を深めている様子が見られました。

漁師宿での豪華な夕食と意見交換会

そして楽しみにしていた夕食。宿泊していた宿は「漁師宿」という名前の通り、素敵な海鮮料理が盛りだくさん。一人一皿出てきたてっさ(ふぐの刺身)には、みんな感動していました。

食後は漁師宿の主人と、日間賀島観光協会の青年部の方に協力していただき、参加者と島の人たちとの意見交換会を実施しました。

日間賀島の現状や困りごと、そして参加者の持つスキルがあれば課題が解決するのではないかといった話で盛り上がりました。

とくに参加者が課題だと感じていたのは、空き家問題と緊急搬送を含む消防団の体制でした。このあたりが今回のマッチングを機に少しでも解決できていくことを願います。

3日目:篠島で伊勢神宮との深いつながりを知る

3日目の朝は、日間賀島観光協会の方と一緒に希望者でビーチクリーンを実施した後、日間賀島を後にして定期船で篠島へと移動しました。

伊勢神宮と篠島の1,200年以上の関係

篠島では、伊勢神宮と篠島の関係を深く知っていただくため、まずは毎年伊勢神宮に奉納している「おんべ鯛」を作っている調整所のある中之島を見学しました。

その後、伊勢神宮から下賜される材料を使って作られる神明神社を見学。さらに、その神明神社からの材料を使って作られる八王子社も訪れました。

伊勢神宮の古材が、篠島の神社へ、そして次の神社へと受け継がれていく、1,200年以上続く深い縁を肌で感じることができたのではないでしょうか。

海鮮だけじゃない、「デューテラス」の絶品ステーキ

昼食は港からすぐのところにある「デューテラス」へ。島の人と観光客のコミュニティ拠点にもなっているこのお店では、離島ならではの海鮮はもちろん、日本ステーキコンテストで3連覇しているステーキチャンピオンが焼くお肉も名物となっています。参加者たちは、絶品の肉料理に感動していました。

ランチには篠島観光協会の方も来ていただき、ご飯を楽しみながらも他の2島と同様に篠島の現状や課題感などについて意見交換しながら、交流を深めました。

島民の方との対話で旅を締めくくる

その後は島民の方とも1時間ほどお話を伺う機会をいただきました。こちらでも同様に意見交換を実施し、篠島が直面している課題や可能性について深く知ることができました。

ここで今回の2泊3日、3島ツアーの行程は終了。参加者たちは、それぞれの島で出会った人々や知った課題を胸に、ツアーの幕を閉じました。

まとめ:関係人口が紡ぐ、島の未来

今回の地域共創プロジェクトは、単なる観光ツアーではありません。島民の方々との対話を通じて、観光では見えないリアルな課題に触れ、自分たちに何ができるかを考える旅でした。

3つの島はそれぞれに異なる魅力と課題を持っています。しかし共通しているのは、人口減少という現実と向き合いながらも、島の文化や産業を守り、次世代につなげる必要があるということ。

地域共創プロジェクトは、一度の訪問で終わるものではありません。このツアーで生まれた出会いと対話が、継続的な関わりへと育っていくことで、島と人、人と人とのつながりが深まり、新しい可能性が開かれていきます。

あいちの離島3島をめぐる旅は、そんな関係性の第一歩を刻む、意義深い時間となりました。

・・・

執筆者:岡村龍弥(オカムラタツヤ)

プロフィール:合同会社Guild 代表、シャンディのニックネームで親しまれる。「自分らしく生きる人を増やしたい」という想いのもと、どこでも働けるノマドワーカー育成を中心に、旅と教育を軸に活動中。チェコ親善アンバサダーをはじめ、さまざまなアンバサダー活動にも取り組む。