STUDYCATION
あいちの離島で
スタディケーション
投稿日:2026.03.24 更新日:2026.03.24
佐久島×椙山女学園大学 スタディケーションツアーレポート
スタディケーション佐久島

― 癒しとアートの島で、これからの空間デザインを考える2日間―
0. はじめに
愛知県の三河湾に浮かぶ小さな島、佐久島。
「アートと癒しの島」として知られるこの島で、椙山女学園大学生活科学部の学生たちとともに、1泊2日のスタディケーションツアーを実施しました。

今回のツアーでは、島の散策やアート体験、島民の方々とのディスカッション、竹林での作業体験を通じて、佐久島の魅力と課題を肌で感じていきます。日帰りでは味わえない島の夜、特別な時間。学生たちが何を見つけて、どう表現するのか。
秋の終わりがまだ少し残る、初冬の佐久島。2日間の記録をお届けします。
1. 佐久島へ出発

名鉄名古屋駅から西尾駅へ移動し、バスに乗り換えて一色港に到着。一色港から船に乗って、いざ佐久島へ。

秋の終わりがまだ少し残る、初冬の晴れの日。キラキラ光る海、遠くに見える島々、青く広がる空。気持ちの良い海風を船の上で感じていると、あっという間に到着です。
2. DAY1:島散策へ
西港渡船場を降りると、まずは島の散策へ。


癒しとアートの島である佐久島には、島ならではのアート要素が散りばめられています。それは歴史・文化・景観・人々の営み…東港、中央部、西港と島の散策をしながら、ワクワクする島の遊びを見つけていきます。
【東側】東港周辺(一部掲載)
・佐久島の秘密基地/アポロ
東港から近い「アポロの丘」にある、秘密基地のようなアート作品。
・島宿 永運丸(えいうんまる)
島でとれた美味しいものをいただける定食屋さん。お刺身や海鮮のフライなど、島で採れる海産物を思う存分味わえます。
・はる雲
蔵を改装したギャラリーカフェ。独自の作品やドリンクを楽しめる場所。
・八剱神社(はっけんじんじゃ)
永運丸からすぐの場所にある、歴史ある大きな神社。
【中心部】フラワーロード周辺
・佐久島クラインガルテン(ウェルカムスペース)
島の中心部にある交流施設。展示パネルや島の情報が集まる場所です。
・ヤギのビリー
フラワーロード沿いにいる、島のアイドルのヤギ。


佐久島でみつけられるアートはまだまだあります。イーストハウス、おひるねハウス、北のリボン、与市の鼻、ひだまり庵、星を想う場所…名前を見るだけで行ってみたくなるアートスポットが点在しています。

島での思い出を形に出来る「シーグラス」でオリジナルグッズをつくるワークショップ。佐久島ではシーグラス、石や貝などの素材を使ったグッズやアクセサリーをつくることができます。

一つ一つ形が違うシーグラス。色の濃度と透け具合、大きいもの小さいもの。「どんな絵を描こうかな」を表現するための素材を探して見つけていく作業も楽しい。キラキラ輝く空と海、太陽と島の自然を表現する、世界に一つだけのアート作品ができました。
佐久島のホームページには「アート・ピクニック」という地図とスタンプシートでアート作品をめぐることができるので、ぜひ利用してみてください。
3. DAY1:弁天サロンへ集合
島の散策を終え、佐久島弁天サロンへ。

ここはアート散策や自然散策の合間に立ち寄れる、人と文化がふれあう休憩所です。セルフでお茶を飲みながら休憩できるし、アート作品の展示や島に関する資料などを見ることもできます。もともとは古い民家だった建物を修復し、平成10年12月に島おこしの活動拠点としてオープン。アート展やレクチャー、ワークショップ、島で活動する方々の活動拠点など、さまざまな用途で活用されています。
島をはじめて訪れた方も、この弁天サロンを訪れれば、佐久島の情報や歴史文化を学ぶことができ、島の人々との出会いのきっかけになります。

広々とした建物内には厨房「弁天神房・創作の間」、カウンター、小上がり、奥には広い畳のスペース「寄り合いの間」、海が見えるテーブル席「港の見える間」、2階には島の歴史や古墳について学べるスペースがあります。

散策を終えた一同は島の方々と集まり、奥の広い畳のスペース「寄り合いの間」にて自己紹介とディスカッション。
4. DAY1:ディスカッションで得た佐久島の価値
散策を終えた一同は、島の方々と「寄り合いの間」で車座になり、佐久島のこと、島での暮らしのこと、これからのことを語り合いました。
「島ならではのワークショップってどんなものがあるんですか?」
アカニシ貝を使った貝紫染体験や、いつでも参加できる海岸清掃。佐久島では島の自然や素材を活かした体験が気軽にできます。

島のアイコンになっている猫については、島の人が猫好きなことや、映画「ねことじいちゃん」のロケ地になったことも関係しているかも。佐久島には猫を大切にするルールがあって、猫を保護する活動も進んでいるそう。
「田舎の島にきてみてどう思う?」という質問には、「休日に島に来ると自然に触れてリラックスできる」という学生の声。

コンビニがないことについては、島の人から「買いだめしているからなくても順応している。都会では当たり前だったコンビニも、気がついたら不便じゃなくなった」という話も。「佐久島に2軒コンビニができた夢を見た」というエピソードには笑いが起きました。
地元が住宅街だという学生は「幼い頃に感じていた小さな自然の変化をあらためて思い出すことができた」と。
島での新しい遊び方の話も広がります。道にけんけんぱのアートがあったり、散歩しながら楽しめる仕掛けがあります。島の人は「アートの島として細かい仕掛けをたくさんつくって、小さな自然をみつけて楽しめるといいよね」と話してくれました。

一方で、課題も率直に。里山の手入れができていないこと。1000人ほど住民がいた時代は松を採取していて手入れが行き届いていたけれど、今は難しい。山の環境を整える計画や、島の松を再び甦らせるコンテンツが必要だと教えてくれました。
島のコミュニティについては「必要以上におせっかいはしないけど、お互いに声を掛け合っている」。移住者からすると島自体が家族のような感覚で、助け合える関係性があるそう。
景色の話では、民宿 さざなみから出た浜の夕陽や、紫の海岸から見える夕陽がおすすめ。朝日なら新谷海岸で6:30出発がベストタイミング。

最後に「島を探索して空間デザインのアイディアは浮かんだ?」と聞くと、古民家のリノベーションで学生が使える場所をつくりたい、カフェがもっと増えればいい、木や竹に触れられるワークショップもいいんじゃないか、と次々にアイディアが出てきました。
話しているうちに、どんどん佐久島への理解が深まっていく。島の人の想い、学生たちの新鮮な視点が交わる時間でした。
5. DAY1:”Sunset chill time”
ディスカッションを終えて外に出ると、空はもうオレンジ色に染まりはじめていました。

サンセットを見ながらゆっくり語るもよし、静かに眺めながら時間を感じるもよし。今がチルには絶好のチャンス。それぞれ佐久島への想いを胸に、弁天サロンから歩いてすぐの「カフェ 百一」へ。心も体もあたたまる飲み物を頼んで、窓際の特等席へ。

あっという間の1日。夕陽は、あっという間に海に沈もうとしています。飲み物を待つ間、いつもならスマホのチェックをしてしまうところを、今日はなかなかスマホに手が伸びない。
あたたかいココアと夕陽。みんなと過ごすゆっくりとした時間。窓から見える海には、もうほとんど沈んだ夕陽の赤い残像が静かに広がっていて、夜が始まるまでのマジックタイムがスタートしました。

佐久島の空のアートはまだまだ続いていく。もっとゆっくり時間が進んでくれたらいいのに、と思えた瞬間でした。
6. DAY1:特別な佐久島ディナーと夜散歩
佐久島での夜。これは想像以上に特別なものだということを知ってもらいたい。

なぜなら、日帰り旅では絶対に味わえない。佐久島に宿泊して初めてありつける、体験できる、出会える。マジックアワーを超えてやってきた佐久島の夜は、想像をも超えた幸せが体験できます。それは特別なメンバーだと、より素晴らしい時間になることは決まっています。
今夜の宿は「民宿 さざなみ」。海が目の前に広がる落ち着く和室のお部屋、美味しい島のお料理、共同浴場もあるので疲れた体をゆっくり休めてリラックスできます。そのほか、海や自然を楽しめるアクティビティもレンタルできるので、宿泊される際に気になる方はぜひ問い合わせてみてください。
チェックインを済ませて夕食会場へ。落ち着いた畳の広間に入ると、すでに夕食の用意がされています。

その時々、四季折々の島でとれた美味しいものが味わえます。今夜は初冬に嬉しいフグ鍋。みんなで今日の出来事を振り返りながら囲む鍋は特別にあったかい。そして遅れて登場したのはお刺身盛り合わせ。


新鮮でぷりぷりなお刺身は今にも動き出しそうなほど。思わず歓声があがり、白いご飯が進む進む。魚の煮付けにフグの唐揚げ、鍋の締めにはお雑炊…。あれよあれよとなくなる美味しいものたちと満腹な笑顔、美味しい夜の時間はあっという間に過ぎていきます。
ご飯の後は夜散歩。島の夜の道を照らすのはお月様。

ここでは街灯ではなく月が夜道を照らしてくれるそう。それでも安全を考慮して心配な方はライトを用意した方が良いです。さざなみから歩いて5分。佐久島弘法五番札所から筒島弁財天までの一本道を歩きます。夜なので最後まで渡り切ることは難しいので、途中まで。
空に浮かぶ月を見て、こんなに月って明るかったっけ?
輝く星を見て、あの星座ってなんだっけ?
海の音ってこんな音だったっけ?
遠くに聞こえる音まで聞こえてくるような静けさに、私たちの楽しむ声が遠くまで届いているんじゃないかと思いました。
解散してお風呂に入った後、みんなに内緒のデザートタイム。

自動販売機で販売しているアイスクリームで乾杯。どうせ楽しむなら全力で、ということでイーストハウスまで移動。

わくわくする島のおもしろさを見つけるのは、自由な時間と余白があれば朝飯前。たくさん語って楽しんだ時間は写真や言葉では伝えきれないですね。
7. DAY2:Morning with the sunrise
佐久島はあっという間に朝を迎えます。少し夜更かししたメンバーはまだ眠そうだけど、朝の心地よい寒さを感じるとすっきりした気持ちになります。
みんなで歩いて海まで向かいます。ベストスポットは新谷海岸。宿から歩いて5分。少しずつ近づいてくる朝日の気配にワクワクしながら、目の前に広がる海は昨日見た海と空の景色とはまた違うものに感じました。

思わず立ち止まって海を眺めて、朝のぼーっとした気持ちと素晴らしい景色に思考回路がもっていかれてしまう現象がぴったり一致した瞬間を感じました。
朝日を迎えるポジションを見つけて探して歩きだすと、そこには美しい地層が。

地層を背に朝日のお迎えをみんなで待ちます。ゆっくりと、確実に空の色が変わっていく様子をみんなで静かに見守っている時間は、すべての条件が一致した貴重な瞬間。

これは佐久島に宿泊して迎えた朝にしか体験できないこと。朝日を迎えた空を名残惜しく眺めながら、宿に戻って朝ごはん。
8. DAY2:竹林伐採を体験
午前中は佐久島の竹林へ。佐久島では竹林が過密になるのを防ぎ、健全な生育を促すために竹林間伐の作業を行っています。

佐久島は年々深刻化する人口減少と高齢化で、管理が行き届かない竹林が増えています。そこで佐久島では、大学生と一緒に竹林間伐を行い、その竹で「竹あかり」を制作してアート作品として展示。観光資源としての可能性を示し、今後の課題を島の魅力に繋げる活動を続けています。
早速、指導者のもと各自竹を選んで伐採していきます。

竹をつかって何をつくるのか、出来上がりを想像しながら自分のイメージ通りの竹を選んでいく。印をつけた位置でノコギリを引いていきます。見るのとやるのとでは全く違って、思った以上に力がいる作業です。

作業をしながら、竹をつかってどんなインテリアや家具をつくろうかと構想を練っていると、あっという間にお昼の時間になりました。
竹林を降りて本日のランチは「ごはん屋海」へ。

清潔感のある広々とした空間で、東港近くにある定食屋さんです。島の美味しい海鮮料理がお得に楽しめます。落ち着いた店内で美味しい料理を堪能しました。
9. DAY2:クロージングディスカッション
お昼の後は佐久島クラインガルテンへ。

この2日間を振り返りつつ、佐久島の竹ワークについてアウトプットを行います。
インスピレーションタイム

まずは素材としての竹の特徴や、他地域の竹プロダクト事例を学びます。プロダクトや家具、景観材、公共空間、ソーシャルデザイン。
竹で何を作るかではなく、竹でどんな体験を生むか。竹の問題を解くと島のどこが良くなる?誰が喜ぶ?佐久島にきて感じたことも含めて「竹」についてアイデアを出していきます。
アイデア創発ワーク
それぞれの視点でアイデア出し。モノ、体験、関係。出てきたアイデアは、たけのこの段階で採取して民宿で料理して食べる、竹をつかってつくりたいインテリアや家具をつくる、竹のアートを観光客につくってもらう、夏は竹風鈴をつくって持ち帰ってもらう、流しそうめんを通年できるようにする(竹の採取から行う)、家づくりのアートを竹で作る、シーグラスと竹でアートをつくる、竹採取からアート作成、島民とのごはん、竹蒸し料理…次々とアイデアが生まれます。

チームで共通テーマを整理し、「佐久島ならでは?」で案をブラッシュアップ。まとまった方向性は、竹×食×島民の体験コンテンツ、流しそうめん(1日目工作/2日目実施)、竹の日陰をつくるオブジェクトなど。
そこから形・体験フローをスケッチしていきます。竹が育つ前にたけのこの時点で採取する、竹の皿や箸で食べてお土産にもする、流しそうめんの流れを説明、台も自分たちで作る、キャンプファイヤーや竹アートも組み合わせる…具体的なイメージが形になっていきました。
最後にそれぞれのアイデアをシェア。佐久島での2日間で感じたこと、見つけたこと、これから表現したいこと。それぞれの想いが言葉になっていきます。
10. まとめ
佐久島での暮らしは決して便利なものではありません。コンビニはなく、街灯も少ない。普段の生活で当たり前にあるものが、ここにはないことがあります。

世の中にはたくさんの「ある」で溢れていて、それが「ある」ことが当たり前になっている。なにが「ある」と幸せなのか。それは本当に必要なものなのか。そんなことを考えることすらできないのが、普段の当たり前の生活。
では佐久島にあるものは?それはつまり、佐久島にしかないもの。

ここにしかないものが「ある」ことが佐久島の魅力だと感じました。アート、自然・景色、食べ物、人…普段にはなくて佐久島にしかないもの、その時間を味わうために、佐久島にきてもらいたい。佐久島で流れる時間を、ぜひ体験してもらいたいです。


そして、そこから感じたことを自分自身の手で実現してほしい。それぞれのオリジナリティ溢れる表現がこの島のアートとしてどんどん増えていってほしい。みんなで守り作り上げていくアートの島、それがこれからの佐久島なのかもしれないと感じた2日間でした。
・・・

執筆者:宮田 唯(一般社団法人日本ワーケーション協会)
プロフィール:富山県にて約5年間、まちづくりに従事。横丁というユニークな地域拠点の運営管理をはじめ、国・県・市町村による各種行政事業の企画提案・運営・実施管理、さらには地域イベントや観光・移住促進に関するコンテンツ制作まで、幅広い業務を担う。富山県および県内各市町村が連携する広域ワーケーション推進事業では統括責任者を務め、県内外における多様なワーケーションプロジェクトに実績を持つ。主な監修・制作実績に、富山県公式ワーケーションポータルサイト「めぐるとやま」、富山西部観光連携サイト「富山WEST ワーケーション」など。2024年4月に独立し、現在はフリーランスとして全国の地域プロジェクトに携わる。事業設計からクリエイティブ制作・運用まで一貫して手がける、プロデュースとクリエイティブ双方の実務経験を持つ地域実践者。
