STUDYCATION
あいちの離島で
スタディケーション
投稿日:2026.03.24 更新日:2026.03.24
篠島にて名古屋辻学園調理専門学校の学生が1泊2日のスタディケーションを実施しました!
スタディケーション篠島

2025年11月8日(土)から9日(日)、愛知県・篠島にて、名古屋辻学園調理専門学校の学生3名が「スタディケーションモニターツアー」に参加しました。本ツアーは、学生が篠島の魅力や地域課題に触れ、学びや気づきを得ることで、持続可能な関係構築の方法を探ることを目的としています。また、学びのアウトプットとして、2026年3月にひつまぶし専門店「まるや本店」で提供されるコース料理の一部メニューを学生が考案する予定です。篠島の食材を使ったメニュー開発に挑戦します。

【1日目】
緊張と期待を胸に、篠島での学びが始まる

冬の気配はあるものの、風がなく穏やかな天気に包まれた1日目。学生たちは控えめな緊張をにじませつつも、これから始まる2日間への期待を胸に島へ降り立ちました。
<学生紹介>

櫻井佑河さん(1年)
うなぎ料理が大好きで、将来はうなぎに関わる仕事に就くことが夢。新しいことに挑戦したいと考え、スタディケーションへの参加を決意。

鈴木裕英さん(1年)
好きな食材は玉ねぎ。高校時代、文化祭運営の経験が楽しかったことから、入学後はさまざまな行事に参加すると決め、今回のツアー参加を決めた。

サリバン瑠香さん(1年)
将来像はまだ模索中だが、自衛隊の料理人に興味あり。漁に関心があったものの経験はなく、面白そうだと感じたことが参加のきっかけ。
篠島を支える人たちとの濃密な意見交換

観光施設「篠島DIEUX TERRACE(デューテラス)」に到着。初日は料理人、まちづくりに携わる人、漁業協同組合員、漁師、仲買人など、さまざまな立場の島民と交流し、篠島の現状や魅力を学びます。同時に、メニュー考案に向けたヒントも探ります。


最初に出迎えてくれたのは、辻学園のOBであり、篠島DIEUX TERRACEで料理人を務める岩波仁さん、そして篠島観光協会の役員であり、篠島まちづくり会の副会長を務める新美満香さん。「食材の仕入れはどうしていますか?」「島で栽培している食材はありますか?」「篠島で働く魅力は?」など、学生からは素朴でまっすぐな質問が飛び交います。

篠島漁業協同組合・参事の鈴木裕之さんからは、近年の水揚げや放流事情、島が抱える漁業課題、新たな取り組みなどが語られました。事業者として海産物を扱うなら「産地の人とつながっておくことはとても大事」というアドバイスに、学生たちも深くうなずきます。

意見交流の最後は、しらす漁師の松本一喜さん、仲買人の天野峰夫さんと交流。学生たちも徐々に慣れてきたことで、「3月に使えるおすすめの魚は?」「篠島ならではの食べ方は?」など、メニュー開発に踏み込んだ質問へと変わっていきます。
季節や水揚げ量、鮮度、相性など、料理の背景には多くの条件がつきまとうことを知り、学生はメニュー開発の難しさと奥深さを学びました。
牡蠣養殖の裏側に触れる
DIEUX TERRACEを後にした一行は、牡蠣養殖の現場を見学させてもらえると聞き、船に乗り込みます。実は、愛知県で初めて牡蠣の養殖に成功したのは篠島。立役者となったのは新美大次郎さんです。

養殖場では、牡蠣がどのように育ち、どんな点に気をつけて管理されているのかを見学。「同じ環境でも成長が違うので、定期的な選別が欠かせない」など、初めて知る工程に学生たちは驚きと発見の連続でした。



沖合から見上げた秋空は美しく、まるで私たちを歓迎しているかのようでした。

“食べる”ことで1日の学びが深まる

1日目最後の食体験は「炭焼き納屋 ゆうせん」での夕食。お店に着くと、炭焼きの香ばしい匂いが漂います。

さわらのしゃぶしゃぶ、いわしの甘露煮、天然とらふぐの刺身、鯛の炭焼きなど、登場する料理のほとんどが、昼間に学んだ篠島の食材。まるで伏線が回収されるような体験に、学生たちの表情が輝きます。
「おいしい!」
自然と笑みがあふれ、今日採れたものをその日のうちに味わえる喜びを噛みしめていました。



食事を共にしながら、料理長・川口修さんからも貴重なお話を伺いました。「メニュー開発で気をつけていることは?」「学生のうちからやっておくと良いことは?」など、料理を志す学生にとって大先輩からの教えは大きな学びとなりました。

ウミホタルふれあい発光観察会

1日目の締めくくりは、辻満剛さんによる「ウミホタルふれあい発光観察会」。綺麗な海岸の使者と呼ばれるウミホタル。子供たちが海岸のゴミ拾いを始めたことがきっかけで、篠島に生息するようになったことを学びます。

電流を流すと青く光る、神秘的な姿を間近で観察します。「島の人の優しさでできているのが素敵」と感想が上がりました。
参考:篠島でのウミホタルふれあい発光観察の詳細についてはこちら
【2日目】
初めての漁体験

篠島DIEUX TERRACEの料理人である東さんと岩波さんと一緒に、産地で料理をつくる醍醐味である食材を自分たちで獲る体験を行う
2日目の始まりは、篠島スタディケーションの目玉の一つ「漁体験」。雨予報にもかかわらず、この時間だけ天気が味方してくれました。船で沖へ向かい、いよいよ釣り開始。

見事釣り上げたのは櫻井くん。「少し重たいなと思って持ち上げたところ釣れていた」と嬉しそうに話します。2時間ほどで漁体験は終了。「あっという間だった」「船が結構揺れた」と、初めての体験をそれぞれが楽しみました。
三船亭での濃密な学び
朝食後に向かったのは「篠島あなごの宿 三船亭」。料理長の天野明弘さんに話を聞きます。実際に宿で提供されるメニュー表を見ながら、気になった点を学生たちが質問。「魚醤は何から作ってる?」「ふぐはポン酢以外で合う調味料はある?」「オイルにはどんなハーブを使ってる?」など、料理の専門学生らしい視点が光ります。

「実際に試してみる?」と出されたのは穴子の刺身。「臭みを取る方法は?」「これは何日寝かせたものですか?」など会話が弾み、その後もイワシ、えび、ふぐなど、さまざまな食材を実際に味わわせていただきました。最後は出刃包丁の切れ味まで体験。学生たちにとって貴重な経験となりました。


漁港の活気を肌で感じた市場見学

しらすの水揚げが始まるとのことで市場へ移動します。鮮度の見極め方、競りの流れなど、市場ならではのリアルを学びます。子どもから大人まで、手際よく、真剣に働く姿が印象的でした。

水揚げされたばかりの新鮮なしらすをお土産にいただき、お昼ご飯で贅沢にいただきました。

初めての捌き体験
昼食後は魚捌きを体験。朝、自分たちが釣った魚を、名古屋辻学園調理専門学校の三浦康佑先生の指導のもとで捌きます。

「カサゴはとげが多くて難しかったけど、自分で釣った魚を捌けて嬉しかった」と櫻井さん。「尾に向かって身が細くなるから、均等な薄さにするのが難しかった」とサリバンさん。「難しかったけど楽しかった」と鈴木さん。また一つ、貴重な経験が積み重なりました。
車エビ養殖を知る

2日目の締めくくりは、車海老養殖に励む板谷美晴さんとの意見交流会。「島のために一生懸命な人を見て、私も挑戦しようと思った。最終的にはブランド化したい」という熱い思いに、学生たちは真剣に耳を傾けていました。
“食材の向こう側”に触れた学生たちが得たもの

2日間で多くの現場を訪れ、関係者の思いや努力に触れた学生たち。最後に語られた感想には、それぞれの学びがしっかりと刻まれていました。
・櫻井さん
「これだけ手がかかっていることを知ると、一つも無駄にしたくないと思った。」
・鈴木さん
「食材の向こう側にある情熱や誇りを感じた。食べていなくても美味しさが伝わる。そうした食材の魅力を活かした料理を作りたい。」
・サリバンさん
「採れたてはやっぱり新鮮。新鮮な状態で提供できる場所でお店を出したいと思った。」
この経験をもとに、学生たちはいよいよ本格的なメニュー考案へ進みます。こうして篠島の魅力が次の世代へと受け継がれていくことに、本取り組みの大きな意義を感じました。
まとめ
本スタディケーションの大きな特徴は、「料理」という専門性をもつ学生が初めて参加した点にあります。島で働く料理人や漁業者、仲買人など、“食”に関わる人々との共通点が多かったことで、学生はより深い話を引き出すことができ、島の人たちとの距離も自然と縮まっていきました。
今回の経験をきっかけに、今後は全国の料理系学生に向けて同様のスタディケーションを展開したり、若手料理人のインターンや修行につなげられるかもしれません。教室では得られない特別な学びを実地で体験できる場が増えれば、若い世代の視野や技能の育成に寄与することも期待できます。また、島での就業や移住といった選択肢が生まれることも考えられます。こうした流れが定着すれば、若手不足や人口減少といった地域課題への一つのアプローチになり得るのではないでしょうか。
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執筆者:YUIKA(一般社団法人日本ワーケーション協会)
プロフィール:フリーインタビュアー。観光・地域・グルメ・文化・芸能など幅広いジャンルのインタビューを年間120本以上行う。現場取材と対話を通して、相手の想いや背景にあるストーリーを引き出し、その人や地域、取り組みの魅力を伝えることを得意とする。
