STUDYCATION
あいちの離島で
スタディケーション
投稿日:2026.03.27 更新日:2026.03.28
日間賀島にて日本福祉大学の学生が1泊2日のスタディケーションを実施しました!
スタディケーション日間賀島
026年3月10日(火)から11日(水)にかけて、日間賀島にて、日本福祉大学工学部工学科の坂口先生と学生5名が参加するスタディケーションモニターツアーを、1泊2日の日程で実施しました。
今回の訪問は、スタディケーションの取り組みの中で、地域課題を実際に見て、歩いて、聞いて、考える時間として実施したものです。
日間賀島といえば、たこやふぐをはじめとした観光のイメージが強く、島内にも活気があります。実際に訪れてみても、観光地としての魅力や、人の行き来の多さを感じる場面がたくさんありました。
一方で、そうしたにぎわいの裏側には、これから先の地域のあり方を考えるうえで見過ごせない課題もあります。今回、学生たちと一緒に見つめたのは、その一つである「空き家」の問題でした。

※日間賀島西港の様子
島に着いてからは、学生たちは2グループに分かれ、島の中を実際に歩きながら空き家の状況を見て回りました。
机の上で地域課題を学ぶのではなく、実際の風景の中で確認していくことで、建築を学ぶ学生ならではの視点も自然と出てきます。建物の使われ方や周辺環境との関係、立地の特徴、生活の気配が残っているかどうかなど、一つひとつの建物を見ながら、それぞれが感じたことを言葉にしていきました。
また、日間賀島観光協会の方にもご案内いただき、島の方の視点から空き家の現状についてもお話を伺いました。
外から見ると「使えそう」に見える建物でも、実際には権利関係や管理の問題、改修コスト、地域との調整など、さまざまな事情があることがわかります。学生たちにとっても、建築や空間の話だけではなく、地域の暮らしや人との関係の中で空き家の問題を考えるきっかけになったように思います。

※鈴木康典さん(日間賀島観光協会)から日間賀島西港周辺の空き家状況の説明を受ける

※実際に自分たちで歩きながら日間賀島の牡蠣や調査を行う

※一度空き家になったが再利用されている住居

※廃業した旅館
今回、学生たちがまず感じたのは、「思っていたより空き家が多くない」ということでした。
離島というと、人口減少や高齢化が進み、空き家が目立つ場所というイメージを持つ人も少なくありません。学生たちもある程度そうした印象を持っていたようですが、実際に歩いてみると、想像していたほど空き家だらけというわけではありませんでした。
ただ、そこで終わらなかったのが今回の学びの面白いところです。
表面的には空き家がそこまで多く見えなくても、日間賀島では緩やかに人口減少が進んでおり、この先を考えると決して楽観できる状況ではない。しかも、現時点では観光客が多く訪れているため、地域として大きな危機感が見えにくく、課題が少し先送りされやすい構造があるのではないか。
学生たちは、現地を歩き、話を聞いたからこそ、そんなことに気づいていきました。
これはとても大事な視点だと思います。
地域課題というのは、困りごとが目に見えて大きくなってから考えるのでは遅いこともあります。にぎわいがある今だからこそ、その先を見据えて準備をしておくことが必要で、その意味でも今回のフィールドワークは、日間賀島の現在地を考える良い機会になりました。

※日間賀島東港周辺のレトロなまち並み

※井戸や消火器の場所なども調査
夜には、日間賀島観光協会のみなさんと、空き家の現状や今後の利活用について意見交換を行いました。
昼間に実際に見てきた建物の印象と、地域の方々が日々感じている現実とを重ね合わせながら話をする時間は、学生たちにとってもとても濃い時間だったと思います。
地域の方からは、空き家は単に“空いている建物”ではなく、そこに暮らしてきた人の歴史や家族の事情、島の人間関係も含んだ存在であることが伝えられました。
一方で学生たちからは、建築を学ぶ立場から見た空間活用の可能性や、「もしこういう使い方ができたら」という素朴なアイデアも出されました。
こうしたやりとりを通じて、地域課題を考えるうえでは、専門性と現場感覚の両方が必要であることを、あらためて感じる場面になりました。
学生から「言いにくいけど今後人口減少が進むなかで、逆説的に“ゆるやかな終活”という考え方もあるのではないか?一度考えてみるとこれからの日間賀島で行っていかないといけないことも見えてくると思う。」という発言がありました。
この言葉が日間賀島観光協会の方々は心に刺さったようで、空き家の活用について様々な意見交換が続きました。

※夕食では日間賀島名物たこの丸茹でを堪能
翌日には、観光協会の方が個人的に購入し、実際に利活用している空き家も見学させていただきました。
これは学生たちにとって、とても具体的な学びの場になったと思います。空き家活用というと、どうしてもアイデアや構想の話になりがちですが、実際に動いている事例を見ることで、「使う」とはどういうことかが一気に現実味を持って見えてきます。
建物の改修の工夫や使い方はもちろんですが、それ以上に印象的だったのは、「地域の中で誰がどんな思いでその場をつくっているのか」という部分だったように思います。
建物そのものだけでなく、使う人がいて、関わる人がいて、少しずつ意味を持った場になっていく。そうしたプロセスを実例として見られたことは、建築を学ぶ学生にとっても大きな刺激になったはずです。

※高瀬宏充さん(日間賀島観光協会)の奥様がサロンとして空き家を再利用

※夏期のイベント運営で島外の業者の方の長期宿泊場所として再利用されている空き家
今回の空き家調査や意見交換を通じて、学生たちの中から出てきた一つのアイデアが、「これからの日間賀島には、関係人口やワーケーション、スタディケーションで島に関わる人たちが滞在や交流できる拠点が必要なのではないか」というものでした。
今すぐ大規模に空き家を整備するという話ではありません。
ただ、今後、島に短期・中長期で滞在しながら地域と関わる人が少しずつ増えていくことを考えると、そうした人たちの受け皿となる場があるかどうかは、とても大切になってきます。
観光で訪れるだけではない、学ぶ、働く、関わる、試してみる。そうした多様な滞在のあり方を支える拠点は、これからの離島にとって一つの鍵になるかもしれません。
そして最後には、空き家を活用した場づくりについて、すでに別の事業でも動きが出てきそうだという話も踏まえながら、「まずは小さく取り組んでみることが大事ではないか」というネクストアクションにまとまりました。
最初から完成形を目指すのではなく、まずは一つの場をつくってみる。小さく始めて、使ってみて、関わる人の声を聞きながら育てていく。そうした進め方のほうが、日間賀島のような地域には合っているのかもしれません。
今回のスタディケーションは、建築を学ぶ学生たちが空き家というテーマを通じて、建物だけではなく地域そのものを見つめる時間になりました。
そして同時に、日間賀島にとっても、未来の場づくりを考えるための小さなきっかけになったように思います。
観光地としての魅力があるからこそ、その先の地域の姿をどう描いていくのか。
今すぐ大きな答えが出るわけではありませんが、こうして現地で歩き、対話し、可能性を少しずつ言葉にしていくこと自体が、次の一歩につながっていくのだと感じました。
来年度に向けて、こうした小さな実践がどのように形になっていくのか。
日間賀島でのこれからの場づくりも、引き続き丁寧に見ていきたいと思います。

