WORKCATION
あいちの離島で
ワーケーション
投稿日:2026.03.27 更新日:2026.03.30
あいちの離島ワーケーションツアー 篠島×日間賀島
ワーケーション日間賀島篠島

― 多様なプロが島に集い、未来へのアイデアを持ち寄る―
0. はじめに
2026年2月6日(金)〜7日(土)、愛知県の離島・篠島と日間賀島を舞台に、1泊2日のワーケーションツアーが開催されました。 集まったのは、フリーランス、会社経営者、地域で活動する実践者たち。それぞれに異なるキャリアと問いを抱えた社会人たちです。
そして今回、ひとりだけ大学生の姿がありました。人間環境大学3年生のもえちゃん。
本事業のスタディケーションから関わりを続けてきた彼女が、社会人向けのワーケーション募集を目にして、自ら手を挙げてやってきました。

島との関わりを深め、それぞれの仕事や活動のなかで共創できるきっかけを探していく2日間。そして彼女にとっては、社会人たちのリアルな姿に触れながら、自分の居場所や、自分らしく生きることのヒントを探す旅でもありました。
冬の海が静かに光る、2月の離島。2日間の記録をお届けします。
1. 篠島へ出発
名鉄で河和駅に集合し、みんなで歩いて河和港へ向かいます。「前回来たのはいつだっけ」「去年も来たよ」「実は10年以上ぶりなんです」ーそれぞれの島との記憶を辿りながら、今回の訪問への期待を膨らませて、港までの道を歩いていきました。
篠島へ向かう船の上、冬の海上は想像以上に寒さが身に染みます。


それでもその冷たさが、どこか心地よい。今日からはじまる篠島と日間賀島での出来事や出会いが、待っているから。河和港から揺られること約30分、途中の日間賀島を経由して、篠島へ到着します。
2. DAY1:篠島DIEUX TERRACE(デューテラス)へ

篠島の港に到着。港を出てすぐ目の前にある「島の駅 SHINOJIMA(シノジマ)」は、篠島を訪れる人々を出迎える玄関口です。高速船やフェリーの乗船券が購入できるのはもちろん、島のお土産や飲食コーナーも。船を待っている間の憩いの場として、ピアノや海を見ながらゆったりと過ごせるスペースも完備されています。

まず向かったのは篠島DIEUX TERRACE(デューテラス)。

篠島港から徒歩1分という好立地にある、海鮮グルメや本格バーベキューを楽しめるリゾート施設です。篠島を訪れる人は必ずここを目指して、島探索をスタートさせます。

今回はカフェでランチ。島の名物のひとつ、しらす丼。そして新鮮な牡蠣料理も自慢のデューテラスでは、ちょっと一杯楽しめるセレクトもできちゃうのが嬉しいところです。


ランチを食べながら篠島のこと、この後の流れを説明します。一通り終わったところで、参加メンバーの自己紹介タイム。今回参加した思いを、それぞれが話しました。午後からは各自自由なワーケーションタイム。仕事をしたり、島を探索したり、思い思いの時間を過ごします。
3. DAY1:ワークタイム
快適に仕事が捗ること。それはワーケーション滞在において、最も重要なポイントのひとつです。仕事をしながら旅をする私たちは、いつでもどこでも仕事ができる。でも、できるなら快適に仕事をしたい。そんな欲張りな部分を叶えてくれる場所が、篠島にあります。

篠島観光ホテル 大角さんは、宿泊施設にコワーキングスペースが完備された施設です。窓の外に広がるのは、篠島自慢のオーシャンビュー。この海の景色は、ほかの場所では代えがきかない美しさがあります。

その景色を目の前に仕事ができるのは、このためだけに篠島を訪れたくなるくらい、ワーケーション好きの心をくすぐります。
4. DAY1:島を探索
冬の晴れた天気に恵まれ、一行は島散策へ。
篠島の北側にある埋立地(五万坪)、パークゴルフ場跡地の先を歩いていくと、北山公園に辿り着きました。

かつては離れ小島だった小磯島が埋め立てられた場所で、今は歩いて渡ることができます。見晴らしの良い景色には、篠島の歴史とこれからの課題が、同じ画角に映り込みます。春になると桜の名所としても知られる、知る人ぞ知る気持ちのよい散歩コースです。

歩き進めた一行が次に向かったのは篠島漁港。島最大の産業拠点であり、日本有数のしらす水揚げを誇る場所です。

この日は貴重な作業現場を見学させていただきました。巨大な水槽の中を元気に泳ぐ、たくさんのフグ。
篠島漁港で水揚げされた新鮮なフグは、鮮度を保ったまま東京へ出荷されます。


島の恵みを毎日丁寧に届け続ける、現場の方々の仕事の積み重ねがあってこそです。
5. DAY1:篠島をもっと知ろう
次に到着したのは「青い窓の休憩室」。篠島の海岸の景色を、ゆっくりと静かな環境で独り占めできる特別な場所です。まさに島探索の休憩にぴったりなスポット。

広い空と海がひとつになったような、ひらけた景色を目の前に、ベンチとテーブルが置かれています。景色を眺めながらお茶をするもよし、そっと本を開いて素敵な読書時間を過ごすもよし。この場所でどんな時間を過ごすかは、みなさんの自由です。
篠島といえば、伊勢神宮と非常に深い縁を持つ「神明神社」と「八王子社」。篠島の歴史を知るためには欠かせない場所です。


そして、篠島の海は思わず足を止めてしまうほど特別に美しい。
海沿いを歩いていると、ひとりの漁師さんと出会い、声をかけてみると笑顔で話してくれました。


まだまだ奥が深い篠島探索。ぜひ自分だけのルートを見つけてみてください。
6. DAY1:”Sunset chill time & dinner”
各自ホテルへチェックインを済ませて、夕方散歩へ。夕日が見られる時間に合わせて、おすすめの絶景スポットへ向かいます。
海を眺めながら、空の1日が終わっていく時間を過ごします。日常の中にあるいろんな出来事が、この瞬間だけ少し軽くなったように感じます。


大人も学生も関係ない、たったひとりの自分と向き合い、会話することができる貴重な時間です。
宿に戻ると、島自慢の美味しい夕食が待っています。宿泊しないと味わえない特別な夕食は、ワーケーション滞在の醍醐味。


参加メンバー同士、もっとお互いのことを知っていきます。時間が進むにつれて話も深くなっていく。同じ釜の飯を食うとはよく言ったものです。
箸を置くのも忘れて、仕事の話に熱が入ります。
7. DAY1:篠島インプットタイム
夕食が終わったら篠島のインプットタイム。辻満剛さんより、篠島の海岸を清掃するウミガメ隊の活動と、篠島の海に現れるウミホタルの生態についてお話を伺いました。

ウミガメ隊は、アカウミガメが産卵に訪れる篠島の美しい浜辺を守るために、子どもたちが自発的に発足した活動です。アカウミガメの産卵シーズンは5月〜8月。綺麗な海で安心して産卵できるよう、定期的なゴミ拾いを行っています。

そんな子どもたちの思いで海が綺麗になった結果、現れるようになったのがウミホタル。体長3mmほどの小さな甲殻類の生物で、体を青白く光らせることが特徴です。水の綺麗な砂地にしか生息しない、まさに海の美しさが証明する、小さな命です。
8. DAY2:篠島から日間賀島へ
気持ちの良い朝を迎えたメンバーは朝散歩へ。冬の篠島の朝は空気がやさしく澄んでいて、頭の中をリセットしてくれます。

昨夜のエピソードを話しながら囲む朝食もまた格別。篠島での朝のはじまりに、欠かせない時間です。

朝食を済ませた一行は、篠島港から日間賀島へ。
日間賀島に到着すると、日間賀島観光協会・民宿たかせを営む高瀬さんを交えてディスカッションがはじまりました。高瀬さんが語ってくれたのは、今まさに島が直面している課題です。

「今すぐ困っているわけではないけれど、じわじわと変化を感じている」-跡取りがいなくて廃業せざるを得ない観光業や宿が出はじめています。施設の整備や管理を島内の人材だけでまかなえなくなってきていて、シーズン中のビーチ清掃や施設運営にも人手が足りない。現状は「おてつたび」などを活用しながら工夫してやりくりしている状況です。
一方で、未来へつながる取り組みも動き出しています。「オーシャンピック」や生ゴミ処理機の導入など、島内から出るゴミを減らす小さな一歩。観光と環境をかけ合わせた、これからの日間賀島の姿を模索しています。
そして、本事業でワーケーションやスタディケーションで多くの人たちが島を訪れるなかで、関係人口や学生が自由に活動でき、長期滞在も可能な拠点がないことも課題のひとつです。

今回唯一の大学生として参加しているもえちゃんの夢も、じつは宿泊拠点をつくること。参加メンバーそれぞれの知見を生かして、今の現状でどうすれば拠点をつくれるかアイディアを出し合います。そこで浮かび上がってきたのが「拠点づくり×空き家問題」というキーワードでした。
ワーケーションや研究で島を訪れる学生や関係人口が、自由に活動しながら長期滞在できる場所。素泊まり・自炊・共同ワークスペースを備えた、いわば島の「基地」のような存在です。まずは小さく、1年間の試験運用からはじめてみる。そんな具体的な構想が、ディスカッションの中で少しずつ形になっていきました。
高瀬さんの事業では、すでに空き家をリノベーションしてサービスを提供している物件があるとのこと。実際に見学させていただけることになりました。
そしてこの場で、学生がその拠点の「家守」として試験運用を担うアイディアが挙がりました。島に住みながら、場所を守り、人をつなぐ。彼女の夢が、急に現実の輪郭を帯びはじめた瞬間でした。


物件を目の前にすると、アイディアがより現実的になっていきます。「ここをこうしたら」「こんな使い方もできる」-気づけば、島の課題がひとつひとつ可能性に見えてきます。
9. DAY2:まとめ
篠島から日間賀島へわたって過ごした2日間。ふたつの島に必要なこと、私たちにできることが、少しずつ輪郭を帯びてきました。
観光客としてではなく、ワーケーションでこの島に来た私たちが外からの目線で感じたこと。それは、この島の関係者として、この地域の一員として、この営みの一部として関わり続けたい人たちの「居場所」が必要だということでした。単に宿泊施設に泊まるということではなく、いわば彼らの基地となる場所が。

足りないものを足りないと嘆くより、まず考えて動くことが大きな一歩になる。ひとりひとりが自分の人生のなかで、どのくらいこの島と関わり続けられるのか、関わり続けたいのかを問い直すこと。それが今回のディスカッションで生まれた、ひとつの大きな気づきでした。

すぐには解決されない島の課題も、いつその時が来るかはわからない。誰かのせいにすることなく、ただ考え、行動することをやめないこと。それだけが、確かな前進につながると思うのです。
そしてこの2日間のディスカッションは、話し合いだけで終わりませんでした。空き家の実態調査からはじめ、状態の良い物件を選んで内装中心の軽改修でテスト運用を開始する。
大学や研究者と連携しながら台帳を整え、会員制という形で島を訪れる人たちを受け入れていく。小さく、でも確かな一歩を踏み出すための具体的な計画が、島の景色の中で生まれました。
今回の滞在のはじまり、大学生のもえちゃんはこんな言葉を口にしていました。「社会人はどうして夢を語らないのだろう」と。しかし2日間のディスカッションを経て、彼女の中で何かが変わりました。「社会人は、夢を語るだけでは終わらせないんだ」と。夢ではなく目標として、仕事をしながら旅をすること、各地に自分の拠点をつくること、篠島に新しい宿泊拠点をつくること――それらを現実にするために、社会に出て働き、自分のスキルを磨いていくのだと実感したのです。
全国各地に空き家はたくさんあって、それが完全に解決される日は、おそらく遠い。でも1件の空き家が誰かの夢を現実にする可能性は、決して低くない。そのことを、今回のワーケーションは静かに、しかし確かに示していました。

この流れに続きたいと思った方は、ぜひ篠島・日間賀島へ。きっと、あなた自身の「次の一歩」が見つかるはずです。
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執筆者:宮田 唯(一般社団法人日本ワーケーション協会)
プロフィール:富山県にて約5年間、まちづくりに従事。横丁というユニークな地域拠点の運営管理をはじめ、国・県・市町村による各種行政事業の企画提案・運営・実施管理、さらには地域イベントや観光・移住促進に関するコンテンツ制作まで、幅広い業務を担う。富山県および県内各市町村が連携する広域ワーケーション推進事業では統括責任者を務め、県内外における多様なワーケーションプロジェクトに実績を持つ。主な監修・制作実績に、富山県公式ワーケーションポータルサイト「めぐるとやま」、富山西部観光連携サイト「富山WEST ワーケーション」など。2024年4月に独立し、現在はフリーランスとして全国の地域プロジェクトに携わる。事業設計からクリエイティブ制作・運用まで一貫して手がける、プロデュースとクリエイティブ双方の実務経験を持つ地域実践者。
