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WORKCATION

ワーケーション

投稿日:2026.03.25 更新日:2026.03.25

離島に足を運んでこそ見える、地域課題の本質と共創の芽【企業ワーケーションレポート】

企業研修型ワーケーション佐久島日間賀島

今回は、名古屋大学発スタートアップ・株式会社TOWINGさんの佐久島・日間賀島ワーケーションに同行させてもらいました。私にとって、佐久島は今回が二回目、日間賀島は今回初上陸となります。

地域でうごく取り組みを知る1日目

佐久島行船のりばのバス停

まずは、西尾駅からバスで一色港(いっしきこう)へ。ここは、佐久島の玄関口となっており、フェリーは1日7往復(計14便)運航しています。

高速船に乗りいざ佐久島へ

佐久島に到着後は、「弁天サロン」に荷物を預け、2Fの「歴史資料室」で島の出土品である土器や石器類を観覧しました。ここでは、縄文時代の石斧や弥生土器片、古墳時代から飛鳥時代にかけての製塩土器などが展示されています。

弁天サロン2階の「歴史資料室」の様子①

弁天サロン2階の「歴史資料室」の様子②

その後は、弁天サロンの周りを各自で散策。平日に訪れたということもあり、観光客も少なく、非常に静かでした。

坂道を下りながら西港を望む

坂道の間から垣間見える海。筆者が最も気に入っているスポットです

港に並ぶタコツボ

港にはタコツボがびっしり

昼食は佐久島名物の「大アサリ丼」。「民宿 さざなみ」さんがケータリングで弁天サロンまで提供してくださいました。肉厚でプリプリとした食感で、濃厚な磯の香りが口いっぱいに広がります!

佐久島名物の一つ大アサリ丼

食べ応えがあるので、男性でも満足する一品!

昼食後はワークタイムへ。TOWINGの皆さんは社内ミーティングに。

弁天サロン2階の会議室を利用してのワークタイム

私は「弁天サロン」1Fのカウンター席で仕事をしました。のどかな船着場を眺めながら仕事ができます。

西港を望みながら弁天サロン1階のカウンターで仕事ができました

夕方からは、「佐久島クラインガルテン」へ。西尾市佐久島振興課の三矢さんによると、「人口減少や高齢化に伴って遊休農地となっていた場所を整備し、2012年にオープンしました。現在は、法人の方を含めて数棟が入居済みです」とのこと。

「佐久島クラインガルデン」の説明をする三矢さん(西尾市 交流共創部 佐久島振興課)

「佐久島クラインガルデン」の屋根付きバーベキュー設備

その後、佐久島が進めているブルーカーボンプロジェクトの藻場に向かいます。道中で島に住む猫ちゃんに遭遇。佐久島は「猫島」としても知られ、岩合光昭監督の映画『ねことじいちゃん』のロケ地にもなりました。

佐久島の猫

「佐久島では、2000年代からアマモ場が減少しました。今はその再生に向け、子どもたちが主体となってアマモの播種や移植、保全活動が進められています。」と三矢さん。この取り組みが功を奏して、2025年1月には「Jブルークレジット」の認証を取得しています。

アマモ場再生の説明をする三矢さん(西尾市 交流共創部 佐久島振興課)

アマモ場は、地球温暖化や埋め立てなどによる海洋環境の変化によって、佐久島だけでなく日本全国の沿岸域で減少傾向にあります。

大浦海水浴場付近の夕方の様子

その後、日が傾いてきたので一同は宿へ向かいます。今回、お邪魔したのは「民宿 市兵衛」さん。創業55年の民宿で、なんとオーナーは現役の漁師だそう。

「民宿 市兵衛」さんの一室

夕食は、オーナーが釣った海の幸を使った料理の数々。豪華すぎる!テーブルには、今まで見たことのないサイズのタコが。

「民宿 市兵衛」さんの夕食

肉厚でジューシー。人生で食べた中で最も濃厚な味でした。タコの概念が覆ります。

佐久島で採れたたこ

新鮮な海の幸を心ゆくまで堪能し、この日は床につきました。

プレイヤーが考える島の未来と課題を知る2日目

新谷(にいや)海岸付近の様子

2日目は、早朝から新谷(にいや)海岸へ散歩をしに向かいます。紫色に見える珍しい砂浜が特徴。ムール貝等の貝殻が砕けて砂に混じることで、独特な色合いになるのだそう。

早朝の新谷(にいや)海岸

また、この海岸一帯は約2300万年前〜1500万年前に堆積した砂岩や泥岩の地層があり、当時の環境を知る貴重な場所としても知られています。

新谷(にいや)海岸付近で見れる地層

その後、「市兵衛」さんで朝食をいただいた後は、再びクラインガルテンへ行き、クラインガルテン担当者の木下さんや、ブルーカーボンの取り組みを行っている島を美しくつくる会の大島さんと意見交換が行われました。

島民の大島さん(島を美しくつくる会)からアマモ場再生活動の説明を受ける様子

まず、ブルーカーボンの取り組みについては、現在、地元の児童生徒が主体となり、島民、漁師、島外ボランティアが連携してアマモの再生・保全活動を行っています。

「この活動によって得られたブルーカーボンは、カーボンクレジットとして販売ができ、佐久島では、およそ数百万円分の価値に換算されています。今後のアマモの移植やボランティア活動の資金に充てることができ、外部の補助金だけに頼らない自立的かつ持続的な環境保全が可能になります。」と大島さん。

ただし、波浪や潮流によって移植したアマモが定着せずに流失してしまうことや、人口減少によって海藻保全技術をもつ人が少なくなり、若い世代へ引き継ぐ必要があることなどが課題として挙げられていました。

アマモ再生活動が行われている大浦海水浴場付近の様子

次に話題はクラインガルテンの担当者木下さんが行うサツマイモ栽培へ移ります。佐久島は、かつて島外へ出荷されるほどサツマイモの栽培が盛んでした。しかし、高齢化や人口減少によって従事者の数は減少。

木下さん(佐久島クラインガルデン)から島の畑や土壌の説明を受ける様子

「佐久島では、伝統あるサツマイモ栽培を復活させるプロジェクトが進行中です。サツマイモチップスや、島内で栽培した紅はるかを使った本格芋焼酎『sakushima〜咲島〜』なども開発・販売しています。 」と木下さん。

一色港の待合室でも、「sakushima〜咲島〜」が紹介されていました

ただ、こちらも同様に人手不足がネックになっているようでした。現在サツマイモの多くは、遊休農地で栽培されているため、荒れた土地を農地に再生・維持し続けなければいけません。さらに、土産物・名産品にして販売・観光消費につなげるブランディングには多大なリソースが必要になります。

実際に畑の土壌を確認する様子

佐久島・日間賀島を訪れて感じた、魅力と今後の可能性

「海上タクシー康洋」さんの船

続いて、水上タクシーで日間賀島へ向かいます。日間賀島は、佐久島と比べて観光地化・商業化が進んでいるなという印象を受けました。

日間賀島東港の「がっしー」

昼食は「たいかいろう 東店」さんで。私は「穴子白焼き定食」を注文しました。味はあっさりだけども、程よくのった脂が口の中でとろけ、まろやかで奥深いコクを感じさせます。

「お食事処たいかいろう東店」でのランチ

穴子は、タコやフグと並ぶ日間賀島の名産品の一つです

途中からは、「民宿 たかせ」のオーナー高瀬さん(日間賀島観光協会)も同席し、日間賀島の課題や現在行っている取り組みについて話を伺いました。高瀬さんは宿を経営する傍ら、日間賀島観光協会 青年部部長として観光PRにも取り組まれています。

日間賀島は、漂着ごみの問題があるそうで、昨年から日間賀島観光協会が主体となって、体験型イベント「OCEAN PICK(オーシャンピック)」を開催。これは、観光客がチームで島内を巡りながらごみを拾うイベントで、2025年10月には約99kg、2026年1月には約115kgのゴミが回収されました。

ワークタイムで利用した「民宿たかせ」

昼食後は、「民宿 たかせ」へ行って、TOWINGの皆さんは社内ミーティングを実施。私は地図を片手に日間賀島を散策しました。

「民宿たかせ」の和室を利用してのワークタイム

日間賀島を歩いてみて思ったのは、ホテルと旅館の数がとにかく多い!1分に数件みかけるほど宿泊施設が点在していました。

また、佐久島よりも小さいはずなのに、なぜか日間賀島では東港から西港まで行くのに非常に大変。

東港と西港を繋ぐ日間賀島を横断する道

途中で気がついたのですが、日間賀島は坂が多いんですね。島でも、これだけ地形が違うのだから面白い。

歩いて少し疲れたので、「カフェまりんぶるー」で一休み。かちま荘内に併設されたカフェで、窓からは海を一望できます。

「カフェまりんぶるー」で一息

ちなみに、「カフェまりんぶるー」では、希望すればタロット占いをしてもらえるみたいです。その他トリックアートのフォトスポットがあったり、隣接されている「貸衣装かちまコスプレ館」では、鬼滅の刃、人魚、海賊、乙姫などの衣装を貸し出していたりと、来訪者を飽きさせない工夫がたくさんありました。

「カフェまりんぶるー」の外観

今回は、時間の都合上、そこまで長居できず……。後ろ髪を引かれる思いでしたが、子供や友達と来ても、本当に楽しめる場所だと思います!

「カフェまりんぶるー」の勇者証明書

会計時に勇者証明書をもらいました。遊び心満載ですね!

日間賀島の南側外周道路から望む篠島

その後は、海を横目に西港を目指して歩きます。

日間賀島に点在するベンチ

この道には、海を眺めながら一休みできるベンチがいくつかあります。SNS映え間違いなし!

日間賀島のランドマークの一つ「たこ駐在所」

よく目を凝らしてみると、駐在所がタコの形に。遊び心が満載

海風を感じながら歩いていたら、西港へ到着。息のつく暇もなく、あっという間に乗船の時間となり、惜しみながらも日間賀島を後にしました。

日間賀島西港周辺の様子

さいごに

ワーケーションツアーの帰路で、TOWINGの永田さんが「当初は、離島に対してイメージが湧いていなかったです。ただ、いつもと違う場所で打ち合わせや仕事をしたことで、新たなインスピレーションを得られました。また、地元の人から佐久島と日間賀島の歴史や取り組みを直接聞けたことで、ただ滞在するだけではない、意義のある時間を過ごせました」と、感想を述べられていました。

私も、まさしく同じで、地元で活動する方々から取り組みの内容や歴史、課題などを直接聞けたことで、島民の方々の思いや取り組みへの理解が深まったと感じます。また、佐久島だけでなく日間賀島にも足を運んだことで、それぞれの島がもつ個性や魅力を客観的に比較することができました。

そして、何より佐久島・日間賀島の二島を訪れて痛感したのは、人口減少があらゆる活動の根本的な課題になっていること。ただ、裏を返せば、関わる余白や機会が眠っていると考えることもできます。今回のような企業型ワーケーションの取り組みを通じて、共創型の事業やプロジェクトが生まれていけば、人口減少を解決する先行事例や先行モデルになるのではないか、と思いました。

・・・

執筆者:俵谷龍佑(一般社団法人日本ワーケーション協会)

プロフィール:ライティングオフィス「FUNNARY」代表。/一般社団法人日本ワーケーション協会 ワーケーション公認コンシェルジュ。東京都出身。2021年に京都府へ移住。一部上場のデジタルマーケティング企業で広告運用業務に従事したのち、2015年に独立。BtoB・BtoC領域で3000本以上の記事を制作。最も得意な領域は採用・地域創生。幅広いビジネスモデルの知見をもとに取材・執筆できるのが強み。